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英語と中国語の文法は“似ているようで違う”|基礎編

内山剛@外国語楽習30年

2006年 東京外国語大学中国語学科卒
山口県ゆめ回廊通訳案内士(中国語、英語)
HSK6級195点(2021年)TOEIC825点 (2022年)

現在は韓国語、ベトナム語を独学で学習する独男。

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こんな方におすすめ

  • 英語と中国語を同時に学んでいる人
  • 両言語の違いを整理して理解したい人
  • 学校文法に縛られず、語感で理解したい人

英語と中国語。
どちらも日本人にとって比較的なじみのある言語ですが、「文法的に似ている」と言われることが多いのをご存じでしょうか。

どちらも語順は「主語+動詞+目的語(SVO)」で、名詞や動詞が激しく変化しないため、ヨーロッパの言語よりもシンプルに感じる人も多いはずです。
しかし、実際に両方を学ぶとわかるのは、“似ているようでまったく違う” という事実です。

英語は「時制」という時間の流れの中で文を構築する言語。
一方、中国語は「アスペクト(動作の状態)」や「語順」によって意味を表現する言語です。
つまり、英語が「変化する言語」なら、中国語は「並べて見せる言語」。

この構造の違いを理解することで、学習効率が大きく上がります。
本記事では、英語と中国語の文法を比較しながら、初学者が特につまずきやすい5つのポイントを徹底的に掘り下げていきます。


🧩 第1章:時制とアスペクトの違い|動詞が変わる vs 文が変わる

英語の文法の中心にあるのは「時制(Tense)」です。
たとえば「go」という動詞は、時制によって以下のように姿を変えます。

  • 現在:go

  • 三単現:goes

  • 過去:went

  • 完了形:has gone

  • 進行形:is going

このように、英語では動詞そのものが「時間の経過」を背負っている のです。
英語の学習者が苦手とする「時制の一致」「完了形」「進行形」も、この構造の上に成り立っています。
つまり、英語話者にとって「いつ起こったか」は文の中核です。


一方、中国語では動詞がほとんど変化しません。
「去」(行く)は、過去でも未来でも同じ「去」です。
その代わりに、文全体の中で**「動作の状態」や「時間の手がかり」** を加えて意味を変化させます。

  • 我去了北京。(私は北京に行った)

  • 我去过北京。(私は北京に行ったことがある)

  • 我正在去北京。(私は今、北京に行く途中だ)

  • 我明天去北京。(私は明日北京に行く)

どれも「去」という動詞自体は変化していませんが、助詞や副詞が時間を示しています。
これが「アスペクト」の世界です。

英語が「時間軸で文を整理する言語」であるのに対し、
中国語は「動作の状態を中心に文を作る言語」。

この違いを理解しないまま学習すると、英語の思考をそのまま中国語に当てはめて「過去形がないから不安」「未来形がないからあいまい」と感じてしまいます。
しかし実際には、中国語のほうが“動作の途中・経験・完了”といった時間の質を細かく描ける柔軟な言語なのです。


🧱 第2章:単複の概念|英語は変化、中文は量詞で管理

英語では名詞の単数・複数を明確に区別します。
たとえば次のように、語尾の「s」や冠詞で数を示します。

  • one apple / two apples

  • a book / three books

この単複の一致は動詞にも影響します。
He plays tennis. / They play tennis.
のように、主語の数によって動詞の形が変わります。
つまり英語は「数の一致(concord)」を厳密に管理する言語です。


対して中国語では、名詞の形は単数も複数も変化しません。
“苹果”は1つでも10個でも“苹果”です。
その代わりに、中国語には「量詞」という非常に独特な仕組みがあります。

たとえば:

  • 一个苹果(一つのりんご)

  • 三条鱼(三匹の魚)

  • 五件衣服(五着の服)

  • 两张票(二枚のチケット)

このように、数と名詞の間に「量詞」を入れる必要があります。
英語では “three apples” とそのまま言えますが、中国語では “三苹果” とは言えず、“三苹果” のように必ず量詞が入ります。

量詞は中国語の文化的感性と密接につながっています。
“条”は細長いもの、“张”は平たいもの、“根”は棒状のもの。
つまり、数を数えるときに「形や性質」を意識しているのです。
この感覚は、日本語の「本」「枚」「匹」と似ていますが、中国語では文法的に必須です。

そのため、「量詞を使いこなせる=中国語を使いこなせる」に等しいほど重要。
一方で、英語は形ではなく「数」や「可算・不可算」の概念を重視します。
この対照はまさに、英語=数の言語、中国語=形の言語 と言えるでしょう。


🧠 第3章:冠詞の有無が生む“情報の出し方”の違い

英語の冠詞(a / an / the)は、非ネイティブにとって最も厄介な文法のひとつです。
単に「aは1つ、theは特定」と覚えても、すぐに壁にぶつかります。

たとえば:

  • I bought a book.(ある1冊の本を買った)

  • The book is interesting.(その本は面白い)

ここで重要なのは、「話し手と聞き手が同じ本を知っているかどうか」。
つまり冠詞は“情報の共有度”を表す道具なのです。


ところが中国語には冠詞がありません。
その代わりに、指示語(这=この、那=あの) を使って情報を明確にします。

  • 我买了一本书。(本を1冊買った)

  • 那本书很好看。(その本はとても面白い)

英語のように「共有度」で選ぶのではなく、
視点から見た“位置関係”で区別するのが中国語の発想です。

この違いは、話し方にも大きく影響します。
英語は“客観的な情報整理”を好み、
中国語は“相手との距離感や文脈”を重視する。

言い換えれば、英語は論理的、中国語は状況的。
冠詞があるかどうかで、コミュニケーションの思考構造がここまで変わるのです。


🧭 第4章:語順の厳しさと柔軟性の違い

英語は語順がある程度柔軟です。
「I saw a movie yesterday.」「Yesterday, I saw a movie.」
どちらでも意味は同じ。位置を動かしても成立します。

しかし中国語では語順が非常に厳格です。
たとえば:
❌ 我在昨天北京看电影。
⭕ 我昨天在北京看电影。

中国語の語順は「時間→場所→主語→動詞→目的語」が原則。
少しでも順序が乱れると、意味が崩壊するか不自然になります。


なぜここまで語順が大事なのか。
それは中国語が「文法変化をほとんど持たない代わりに、語順で文法関係を表す」言語だからです。
英語は前置詞や語尾変化が助けてくれますが、中国語は語順しか頼れません。

つまり中国語では、語順そのものが“文法の骨格”。
一方、英語は“文法と語順の分業制”。

英語話者が中国語を学ぶと「順番が窮屈」と感じ、
中国語話者が英語を学ぶと「冠詞や変化が多すぎる」と感じるのは、
この構造的発想の違いが原因です。


💬 第5章:形容詞の扱い|英語はbe動詞、中国語は直接述語

英語では形容詞を使うとき、必ずbe動詞が必要です。

  • She is tired.

  • The coffee is hot.

be動詞は、主語と状態を結ぶ“橋”のような存在です。
英語では「主語+be動詞+形容詞」が一つのパッケージ。
動詞が抜けると文として成立しません。


しかし中国語では、形容詞がそのまま動詞のように働きます。

  • 她累了。(彼女は疲れた)

  • 咖啡热。(コーヒーが熱い)

be動詞を挟む必要がないため、非常にコンパクトです。
また、「很(とても)」を入れて柔らかく言うのが自然です。
“她很累”は「彼女はとても疲れている」となりますが、
“她累”だと「もう限界で倒れそう」くらい強いニュアンスになります。

つまり、中国語では「形容詞=状態動詞」。
“静的な動作”を表す働きを持ち、感情や体調を伝えるときに非常に便利です。

この違いを理解すると、英語と中国語がいかに「動作」と「状態」を別の切り口で見ているかがよく分かります。
英語は「動作と言葉をつなぐ構造」、中国語は「状態そのものを述べる構造」なのです。


🌏 まとめ

英語と中国語は、ともにシンプルな構造を持ちながら、
その背後にある思考のフレームはまったく異なります。

比較項目 英語 中国語
時制 動詞が変化 助詞や語順で表現
単複 名詞と動詞が一致 量詞が中心
冠詞 a / the が重要 指示語で代用
語順 比較的自由 極めて厳格
形容詞 be動詞が必要 そのまま述語

英語は「動詞の変化」で世界を整理する言語。
中国語は「語順と文脈」で世界を描写する言語。

両方を学ぶと、文法を超えて「人間の考え方の多様性」に気づくことができます。


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