こんな方におすすめ
- 中国語中上級者で実践的な学びを求めている人
- 留学に憧れているが金銭面や時間で断念している人
- 学び直しを考えている社会人
ここ数年で、留学の形は大きく変わりました。海外に渡航せず、自宅から本格的に学べる「オンライン留学」は、その代表例といえるでしょう。私自身も3年前、中国の北京師範大学によるオンライン留学プログラムを1年間受講しました。きっかけはHSKの受験で、運営団体から無料の授業募集を知ったことです。
当時、時間に余裕があったこともあり応募し、結果的に20年前に縁のあった大学で学ぶことになりました。授業は平日の午前、2時間弱で20名ほどのクラス。すべて中国語で行われ、音読・質疑応答・意見交換を通じて力を試される内容でした。今回はその体験を整理し、オンライン留学の魅力と実態について紹介します。
HSKから始まった新たな挑戦
私がオンライン留学に参加するきっかけとなったのは、HSK試験を受験したことでした。HSKは中国語の実力を測る国際的な試験で、世界中の中国語学習者が受けています。その試験を通じて運営団体から案内されたのが、中国の大学が提供するオンライン留学プログラムでした。当時はコロナ禍で海外渡航が制限されていたこともあり、渡航せずに中国の大学授業を受けられるという新しい仕組みは非常に魅力的に映りました。
このプログラムでは、参加者が自分で大学を選ぶことはできず、複数の大学の中から自動的に振り分けられる形式でした。私の場合は偶然にも北京師範大学に決まりました。実は20年前、当時付き合っていた彼女がこの大学に留学しており、一度遊びに行った経験がありました。その大学で再び学ぶことになるとは思ってもみなかったので、不思議な縁を強く感じました。
参加にあたり費用は一切かかりませんでした。通常、海外の大学で授業を受けるとなると学費だけでも数十万円から数百万円は必要になります。しかしこの制度は中国政府や大学側の「中国語学習者を増やしたい」という目的のもと提供されているため、無料で受講できたのです。私はその時ちょうど時間に余裕があったこともあり、思い切って申し込むことにしました。
開始前は「無料だから質が低いのではないか」「本当に勉強になるのか」と半信半疑でした。しかし、実際に参加してみるとその不安はすぐに消えました。カリキュラムはしっかりと組まれており、授業はすべて中国語で進行されます。参加者には世界各国から集まった学習者がいて、多様な背景を持つ仲間とともに学ぶ環境は大きな刺激となりました。このように、HSKから始まった偶然のつながりが、自分にとってかけがえのない学習の場を与えてくれたのです。
授業スタイルと学びの実感
北京師範大学のオンライン授業は、月曜から金曜までの平日、午前9時から11時(日本時間)に行われました。1回あたり90分から120分程度で、土日は休講。一般的な大学の大講義のように数百人が一斉に受ける形式ではなく、20名前後の少人数クラスで行われる点が特徴でした。このため、全員が発言する機会を与えられ、主体的に学べる環境が整っていました。
授業内容は、テキストを用いた音読や単語の確認、講師からの質問に答える形式が中心です。場合によっては簡単な討論が行われ、自分の意見を中国語で伝える練習をすることもありました。もちろんすべて中国語で進行されるため、受講者にはある程度の語学力が求められます。私はHSK6級相当の力を持っていたのでなんとか理解できましたが、もし基礎がなければ内容についていくのは難しかったでしょう。
特に印象的だったのは、世界中の学習者と同じクラスで学べたことです。20代の大学生もいれば、社会人や年配の受講者もいました。私は比較的年上の方でしたが、若い世代の発言や学習スピードに刺激を受けましたし、逆に社会経験を生かした意見を述べる場面もありました。国籍や年齢の垣根を超えて同じ目標に向かって努力することで、自分の中国語学習に対するモチベーションが一層高まりました。
また、授業は一方的に知識を教わるだけでなく、発音や表現方法をクラスメイトから学ぶ機会にもなりました。日本で独学していると得られない「生きた中国語」を聞けたことは非常に有意義でした。さらに、オンラインという形態ながら、授業に集中することで「疑似的な留学体験」をしている感覚を味わうこともできました。このように、授業スタイルはシンプルながらも双方向性に富み、大きな学びを実感することができました。
無料だからこその価値と課題
今回のオンライン留学が特別だったのは、完全に無料で受講できた点です。通常、語学留学やオンライン語学学校に参加する場合、少なくとも数十万円の費用はかかります。それを考えると、質の高い授業を無料で受けられることは驚きでした。中国が自国の言語を世界に広めたいという戦略の一環であることは明らかで、学習者にとってはありがたい取り組みです。
ただし、無料だからこその課題もあります。費用がかからない分、受講者のモチベーションは個人に委ねられます。いつでも辞められる環境は、逆に「続けなくてもいいや」という甘えを生みかねません。実際、同じクラスでも途中で姿を消す人は少なくありませんでした。その中で私は「せっかくの縁だから最後まで続けたい」と思い、自分を奮い立たせながら22クールを完走しました。無料とはいえ、毎日の積み重ねは決して楽ではありませんでしたが、それだけに達成感は大きなものでした。
また、無料で提供されているがゆえに、授業の時間帯や教材は一律に決められており、自分の都合に合わせる柔軟性はあまりありませんでした。朝9時からの授業は社会人にとっては厳しい時間帯でもありましたが、それを逆に生活リズムを整える機会と捉えることもできました。
このように「無料」という制度は両刃の剣です。しかし私にとっては、金銭的な負担がなかったからこそ思い切って挑戦できたのも事実です。そして最後までやり切った経験は、自分の自信につながり、その後の中国語学習や仕事にも良い影響を与えています。結果として、無料だからこそ得られた学びは非常に大きかったと感じています。
まとめ
オンライン留学を経験して改めて実感したのは、「学びには年齢や環境の制約はない」ということです。私は大学時代に留学の機会を逃したことで心残りがありましたが、オンラインという新しい形態によって、その思いを補うことができました。授業はすべて中国語で行われ、最初は緊張感も大きく、理解に苦しむ場面もありました。しかし、毎日継続して授業に参加し、仲間と意見を交わす中で、次第に自分の中国語力に手応えを感じるようになりました。これは独学では得られない貴重な成長体験でした。
また、無料で参加できたことは経済的な負担を軽減し、「試してみよう」という一歩を後押ししてくれました。一方で、無料だからこそ「辞めやすい」というリスクもあり、自己管理と強い意志が求められる学びの場でもあります。私は22クールを完走し、自信と達成感を得ることができました。今振り返ると、これは単なる語学力の向上にとどまらず、「自分は最後までやり切れる」という精神的な成長にもつながったと思います。
オンライン留学は現地生活を伴わないため、従来の留学とは異なる部分もありますが、語学力向上や国際的な仲間との交流という意味では非常に価値があります。特に社会人や、もう一度学び直したい人にとっては、現実的かつ効果的な選択肢になり得ます。今後もオンライン教育は進化し続けるでしょう。その中で、自分に合った形で学びを取り入れることが、これからの時代における大きな武器になるのではないでしょうか。
FAQ
Q1. 初心者でも参加できますか?
A. 授業は全て中国語で行われるため、HSK5級以上の実力が必要です。
Q2. 本当に無料ですか?
A. 私が受けたプログラムは完全無料でした。HSK関連サイトで募集されることがあります。
Q3. 授業の雰囲気は?
A. 20名前後の少人数制で、全員が発言できる環境でした。
Q4. 留学との違いは?
A. 現地生活は体験できませんが、語学力強化や国際交流には十分な効果があります。
Q5. どこで申し込めますか?
A. HSK公式ページなどで随時募集がありますのでチェックをおすすめします。