こんな方におすすめ
- TOEICスコアはあるが、実務で自信が持てない人
- 「英語ができるのに伝わらない」と感じたことがある人
- 外国人との仕事でコミュニケーションに苦戦している人
英語を学び続けてきたのに、いざ仕事で使おうとすると全く通じない——。
このギャップに悩んだ経験を持つ人は少なくないと思います。
僕もその一人です。大学時代にTOEICで725点を取り、「そこそこできる」と思っていました。
留学経験はなかったものの、NOVAに通い、英語の授業も受けていた。
メールや文法問題なら得意。けれど「実際の仕事」では、それがまったく通用しなかった。
“できるつもり”の英語が現場では「通じない英語」になっていた。
その現実を前に、自分の無力さを痛感し、僕は1年で職場を去ることになります。
今回は、そんな僕の英語での失敗談をもとに、
仕事の現場で何が足りなかったのか、何を学んだのかを振り返りたいと思います。
英語は“勉強してきた”だけでは通用しない
大学時代、僕は真面目に英語を勉強してきた自負がありました。
NOVAでは週2回通い、パソコンを使ったグループレッスンを受け、
大学でも英文法や長文読解を繰り返していました。
TOEICは725点。周りからは「英語できるね」と言われて、少し誇らしかった。
しかし、今思えば「試験のための英語」しかしていなかったんです。
リスニングは音を拾うだけ、スピーキングは練習しても頭で訳してから話す癖が抜けない。
自分で“会話のキャッチボール”をした経験は、ほぼゼロでした。
最初の職場では、輸出入関連の会社に勤めました。
英語を使う場面は多少ありましたが、実際は定型文をコピー&ペーストするだけ。
「Thank you for your inquiry」「Please find attached」などの“お決まり表現”で
何とか乗り切れる環境でした。英語の「深さ」を問われない。
だからこそ、転職先の技術系メーカーに入社したとき、
自分の実力を完全に勘違いしていました。
入社初日、「英語も中国語もできる男性が来てくれた」と周囲が歓迎してくれました。
その瞬間、自分の中で“英語ができる人”というラベルが貼られた気がしました。
でも、それがどれほど危うい思い込みだったか、
ほんの数週間後に思い知らされることになります。
新しい職場では、海外取引が主な業務。
アメリカ、中国、台湾、フィリピン、ドイツ、韓国と多国間の取引先を担当。
1日100通の英文メール、朝はアメリカ、日中はアジア、夕方からドイツとのやり取り。
時差で休む暇もなく、常に脳が英語で動いているような状態でした。
最初のうちは「英語を使う実践の場だ!」とワクワクしていましたが、
3ヶ月も経つと現実は甘くないと悟ります。
英文メールを何通書いても、相手の反応が鈍い。
「Your English is confusing(お前の英語はわかりにくい)」と返信が返ってきたとき、
頭の中が真っ白になりました。
TOEICで点を取っても、英語の授業で評価が良くても、
ビジネスの現場では“実践力”がすべて。
相手の意図を理解し、結論から伝え、無駄を削る。
そこには「文法」よりも「呼吸の合う会話力」が必要なのです。
このとき僕は、初めて「英語を勉強してきた」ことと「英語で仕事ができる」ことの違いを知りました。
言葉よりも“関係性”で決まる現場のリアル
毎日、ひたすらメールと電話の連続でした。
朝はドイツ、昼は中国、夜はアメリカ。
同じ24時間でも国によって時間軸が違い、頭の切り替えが追いつかない。
しかも、取引先とのやり取りは単なる翻訳ではありません。
トラブルが起きたとき、相手の怒りや不安を読み取り、
どう冷静に説明し、どう納得させるか。
そこには、英語力以上に“相手を見る力”が必要でした。
当時、アメリカの担当者に何度も怒られました。
“Your response is too slow.”(返信が遅い)
“We need accurate information, not guesses.”(推測じゃなく正確な情報がほしい)
相手の立場になって考えれば当然のことです。
でも僕は、英語でのやり取りに精一杯で、
相手の背景や感情を理解する余裕がありませんでした。
そしてもう一つの問題は“社内の人間関係”でした。
当時の会社は小規模で、女性社員が多く、
僕が入社して間もなく3人が退職。
残ったのは、社長、厳しい総務の女性、そして僕。
新入りの僕に、急に海外案件のすべてがのしかかってきました。
本来なら、助けを求めるべきところを、
「自分が何とかしなければ」という意地で抱え込んでしまいました。
その結果、作業は遅れ、ミスは増え、信頼を失う悪循環。
そんな中、英語がネイティブ並みに話せる新しい社員が入社。
アメリカで育った日本人で、英語も文化理解も完璧。
彼の存在で、僕の立場は一瞬で変わりました。
取引先は彼に乗り換え、社内でも
「やっぱり本物の英語ができる人は違うね」と言われる。
彼は悪くありません。でも、僕は完全に心が折れました。
努力しても届かない現実。
自分なりに踏ん張っていたのに、結果だけ見れば“できない人”。
当時の僕は、英語力だけでなく、人に頼れない性格にも問題がありました。
報告・相談を怠り、抱え込み、限界まで我慢して爆発する。
英語の前に、人としての「チーム力」が欠けていたんです。
いくら英語を話せても、孤立していては成果を出せない。
僕が本当に学ぶべきは、“英語力”ではなく“協働力”だったのです。
“英語ができる人”より“伝わる人”になれ
最終的に、僕はその会社を1年で退職しました。
母親の体調不良も重なり、「もう限界だ」と感じていたのもあります。
でも、今思えばあの判断は間違っていませんでした。
退職後、地元の企業に再就職。
英語を使う機会は減りましたが、人との関係を築く力が少しずつ育ちました。
相手の気持ちを考え、仕事を円滑に進めるには、
どんな言葉を選ぶかより、“どんな姿勢で向き合うか”が大事だと学びました。
あの失敗から、僕は「英語を使える人」と「英語で伝えられる人」の違いを痛感しました。
英語を使える人は、文法が正しく、発音も綺麗で、語彙も豊富。
でも、英語で伝えられる人は、相手の背景を読み取り、
文化の違いを理解した上で、自分の意図を噛み砕いて話す人です。
相手が何を求めているかを察し、
一歩先の言葉を選べる人が、本当に“伝わる人”だと思います。
僕が当時失敗したのは、まさにこの「伝える力」の欠如でした。
言葉の正確さばかり気にして、“相手の心”を見ていなかった。
翻訳アプリが進化しても、そこに“人の気持ち”は反映されません。
だからこそ、語学の本質は今も昔も「人を理解すること」にあります。
ビジネス英語を学ぶよりも、相手の文化や考え方に興味を持つ。
完璧な英語より、誠実に伝える姿勢。
この考え方に変わってから、僕のコミュニケーションは一気に楽になりました。
今では、外国人観光客と話す機会も多くなり、
“下手でも伝わる英語”を意識して使っています。
ネイティブに「Your English is easy to understand」と言われたとき、
あのときの悔しさがやっと報われた気がしました。
まとめ
英語での失敗は、単なる言葉の問題ではなく、
人との関わり方、仕事への向き合い方、自分の性格の癖——
それらすべてを映し出す鏡のようなものでした。
あのとき、自分を責めてばかりいたけれど、
今では「必要な遠回りだった」と思えます。
完璧な英語を目指すより、“伝わる英語”を目指す。
そして、英語力よりも“人間力”を磨くこと。
これが、僕が1年の失敗から学んだ最も大きな教訓です。
こんな人におすすめ
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英語力はあるのに評価されず悩んでいる人
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