こんな方におすすめ
- 中国語の第三声が苦手な初心者・中級者
- ピンインどおりに発音しているのに不自然だと感じる方
- 中国語の発音をより自然な会話へ近づけたい方
中国語の第三声は、いったん低く下げてから上げる音。
中国語を学び始めたとき、このように教わった方は多いのではないでしょうか。
中国語の四声を説明する図でも、第三声は谷のような曲線で表されることが一般的です。
しかし、実際の中国語会話を聞いていると、第三声が毎回きれいに下がって上がっているわけではありません。
むしろ、会話の途中では低い部分だけを発音することも多くあります。
これが「半三声」と呼ばれる発音です。
中国語をある程度学習しているにもかかわらず、「声調は合っているはずなのに発音が不自然」
「中国人の話す中国語と自分の発音が違う」と感じる場合、その原因の一つが第三声の扱い方にあるかもしれません。
今回は、中国語の発音の中でも見落とされやすい第三声と半三声の関係について、具体例を交えながら詳しく解説します。
1. 教科書で習う第三声と実際の会話の第三声は何が違うのか
中国語の普通話には、第一声、第二声、第三声、第四声という4種類の基本的な声調があります。
第一声は高く平らな音、第二声は上昇する音、第三声は低く下がってから上昇する音、第四声は高い位置から
急激に下降する音として説明されるのが一般的です。
この説明は、声調の基本的な特徴を理解するうえで非常に役立ちます。
しかし、第三声については、一つ注意しなければならないことがあります。
それは、教科書で示される「下がってから上がる」という音の動きを、実際の会話ですべて再現する必要はないという点です。
例えば、次の単語を見てください。
老师(lǎoshī)=先生
「老」は第三声、「师」は第一声です。
第三声の基本形だけを意識すると、「老」を低く下げてから大きく上昇させ、その後「师」を発音しようとするかもしれません。
しかし、自然な会話では、「老」を低く抑え、後半の上昇を大きくつけずに「师」へつなげるのが一般的です。
この発音が半三声です。
声調を5段階の高さで表す方法では、第三声の典型的な基本形を「214」、半三声を「21」と表現することがあります。
つまり、第三声の低い部分を中心に発音し、上昇する部分を省略するような形です。
別の例も見てみましょう。
北京(Běijīng)=北京
语言(yǔyán)=言語
好看(hǎokàn)=見た目がよい・面白い
これらも、前半の第三声が第一声、第二声、第四声の前に置かれている例です。
通常の発話では、第三声の上昇部分を過度に強調せず、低い位置から次の音へつなげます。
ただし、ここで誤解してはいけないのが、第三声という声調そのものがなくなるわけではないという点です。
辞書に記載される声調は第三声のままであり、文章の中で実際に発音される音の形が変わっているのです。
また、第三声を単独で発音した場合や、文末で強調した場合には、低く下がってから上がる特徴が
比較的明確に現れることがあります。
一方で、文末や単独発音でも必ず完全な谷型になるわけではありません。
発話速度、強調の程度、話者の特徴などによって、実際の声の動きには違いがあります。
したがって、第三声を学ぶ際には、基本的な声調の形を覚える段階と、文章の中で自然に発音する段階を
分けて考える必要があります。
私がおすすめしたいのは、最初に単独の第三声を練習した後、必ず他の声調と組み合わせて練習することです。
第三声を知っていることと、第三声を自然に使えることは同じではありません。
中国語の第三声は、教科書の曲線を正確に再現するだけでなく、実際の会話の中でどのように変化するのかを
理解することが重要なのです。
2. 「你好」だけでは理解できない第三声の連続変化
中国語の声調変化を学ぶ際、最も有名な例が「你好」です。
你好(nǐ hǎo)=こんにちは
この表現では、「你」と「好」の両方が第三声です。
第三声が二つ続くと、通常、前の第三声は第二声に近い上昇音へ変化します。
そのため、実際の発音は「ní hǎo」に近くなります。
この規則は、中国語学習の比較的早い段階で習うことが多いでしょう。
しかし、第三声の連続変化を「你好」だけで理解したつもりになると、少し長い文章で戸惑うことがあります。
例えば、次の表現です。
我很好(wǒ hěn hǎo)=私はとても元気です
この文章では、第三声が三つ連続しています。
ここで重要になるのが、単語や文法上のまとまりです。
「很好」を一つのまとまりとして発音する場合、「很」は後ろの「好」の影響を受けて第二声に近い上昇音になります。
一方、「我」をどのように発音するかは、発話の区切りやリズムによって違いが生じる場合があります。
つまり、第三声が三つ並んでいるからといって、単純に左から順番に声調を置き換えればよいわけではありません。
中国語の声調変化は、文字の並びだけではなく、発話のまとまりにも関係しているのです。
もう一つ例を見てみましょう。
水果(shuǐguǒ)=果物
これも第三声が二つ続くため、最初の「水」は第二声に近い音で発音されます。
では、
水果店(shuǐguǒdiàn)=果物店
となった場合はどうでしょうか。
「水」と「果」の間では第三声の連続変化が起こります。
一方、「果」の後ろには第四声の「店」が続くため、「果」は通常、半三声に近い低い形で発音されます。
このように、短い単語であっても、第三声の連続変化と半三声の両方が関係する場合があります。
さらに、実際の中国語では、声調変化の規則を知っているだけでは不十分なことがあります。
例えば、文章を読むときに一文字ずつ区切ってしまうと、声調変化の流れが途切れ、
不自然な発音になってしまう場合があるからです。
中国語学習者の中には、ピンインを一文字ずつ正確に読もうとするあまり、文章全体のリズムを意識できていない方もいます。
しかし、中国語の会話では、単語や短いフレーズを一つのまとまりとして発音することが重要です。
例えば「你好」だけを繰り返すのではなく、
你好,我想问一下。
Nǐ hǎo, wǒ xiǎng wèn yíxià.
こんにちは。少しお尋ねしたいのですが。
という文章にして練習します。
この場合、「你好」の第三声変化に加え、後ろに続く「我想问一下」という表現のリズムも意識する必要があります。
最初はゆっくり音を確認し、その後、音節のつながりを意識しながら自然な速度に近づけていきます。
重要なのは、毎回頭の中で「第三声だから第二声に変える」と計算しながら話すことではありません。
頻繁に使用する表現をまとまりとして練習し、声調変化が自然に出てくる状態を目指すことです。
第三声の連続変化は、規則を暗記するだけでなく、実際の会話の中で音のまとまりとして習得していく必要があります。
3. 日本人学習者が第三声を強調しすぎる理由
中国語を学んでいる日本人の中には、発音を丁寧にしようとするほど、かえって自然な中国語から離れてしまう方もいます。
特に第三声では、この問題が起こりやすいと考えられます。
その理由の一つは、初級段階で学んだ発音方法を、中級以降もそのまま使い続けてしまうことです。
例えば、第三声を初めて学ぶ際には、低く下げてから上げる動きを大きく練習することがあります。
最初の段階では、第三声の特徴を理解するために役立つ方法です。
しかし、実際の会話でも第三声が出てくるたびに大きく下げて上げていると、文章全体の音の流れが不自然になる場合があります。
日本語にも高低アクセントがありますが、中国語の声調とは異なる仕組みを持っています。
そのため、日本語の感覚で中国語の高低変化を処理しようとすると、意図しない発音になることがあります。
ここで重要なのは、中国語の声調を日本語のイントネーションと同じように扱わないことです。
中国語では、声調の違いによって単語の意味が変わることがあります。
例えば、
买(mǎi)=買う
卖(mài)=売る
この二つは母音と子音が同じでも、声調が異なるため意味が変わります。
したがって、声調を意識すること自体は非常に重要です。
ただし、声調を意識することと、毎回極端に発音することは別の問題です。
例えば、
我买东西。
Wǒ mǎi dōngxi.
私は買い物をします。
という文章です。
「我」と「买」はどちらも第三声ですが、実際には声調変化が関係します。
さらに、「东」は第一声、「西」はこの語では軽声として発音されます。
この文章を一文字ずつ区切り、すべての音節を辞書に掲載されている形で強調して読むと、自然な会話のリズムとは異なってしまいます。
特に、第三声を毎回完全な谷型に発音しようとすると、不要な上昇が入り、音節間のつながりが不自然になりやすくなります。
もう一つ注意したいのは、第三声を低く発音することに集中しすぎて、他の声調との区別が曖昧になる場合です。
例えば、第二声は上昇する音ですが、第三声が連続した場合にも前の音は上昇する形になります。
一方、半三声では低い部分だけを発音します。
このように、第三声は周囲の音によって異なる形を取るため、一つの発音方法だけですべてに対応するのは難しいのです。
私は、中国語の発音学習では「単独で正確に発音する練習」と「文章の中で自然に発音する練習」を意識的に分けることをおすすめします。
例えば、最初は「买」を単独で練習し、第三声の特徴を確認します。
次に「买书」「买水果」「我买东西」というように、短い語句から文章へ発展させます。
その際、声調がどのように変化するのかを確認しながら練習します。
また、自分の発音を録音して聞き直すことも有効です。
自分では正しく発音しているつもりでも、録音を聞くと第三声を不必要に上げていたり、音節間に不自然な間が
入っていたりすることがあります。
こうした問題は、ただ音読を繰り返すだけでは気づきにくいものです。
中国語の発音を自然にするためには、一つ一つの音を正確に発音するだけでなく、文章全体の流れを意識することが重要です。
4. 半三声を習得するための録音・比較・音読練習
第三声と半三声の違いを理解したら、次は実際の発音練習に取り組みましょう。
ここで注意したいのは、最初から長い文章を練習しないことです。
長文では、第三声以外にも母音、子音、軽声、文章のリズムなど、意識しなければならない要素が増えてしまいます。
まずは短い単語を使い、第三声の音の変化を確認することから始めます。
例えば、次の表現です。
半三声の練習
- 老师(lǎoshī):先生
- 语言(yǔyán):言語
- 我去(wǒ qù):私は行きます
- 好看(hǎokàn):見た目がよい・面白い
これらは、第三声の後に第一声、第二声、第四声が続く例です。
最初の第三声を低い位置で抑え、不必要に上昇させないことを意識します。
次に、第三声が連続する表現を練習します。
第三声の連続変化の練習
- 你好(nǐ hǎo):こんにちは
- 水果(shuǐguǒ):果物
- 雨伞(yǔsǎn):傘
- 可以(kěyǐ):できる・よい
こちらでは、最初の第三声が第二声に近い音へ変化することを確認します。
半三声との違いを意識しながら練習すると、第三声のさまざまな形を理解しやすくなります。
その後、短い文章へ進みます。
例えば、
老师来了。
Lǎoshī lái le.
先生が来ました。
我去学校。
Wǒ qù xuéxiào.
私は学校へ行きます。
我想买水果。
Wǒ xiǎng mǎi shuǐguǒ.
私は果物を買いたいです。
といった表現です。
三つ目の文章には、第三声が複数登場するため、単語や発話のまとまりによる変化も意識する必要があります。
ただし、長い第三声の連続では、区切り方によって発音の実現が変わる場合があります。
そのため、複数の単語が続く文章では、信頼できる音声教材や教師の発音を参考にするとよいでしょう。
練習方法としては、次の流れをおすすめします。
まず、手本となる音声を聞きます。
次に、音節ごとの声調を確認します。
その後、自分でも発音し、スマートフォンなどで録音します。
録音した音声を手本と比較し、第三声の上昇部分や音節間のつながりを確認します。
ここで重要なのは、一度の練習ですべてを修正しようとしないことです。
例えば、最初の練習では半三声だけに集中します。
次の練習では第三声の連続変化を意識します。
その後、文章全体のリズムを確認します。
このように練習する要素を分けることで、自分の発音のどこに問題があるのか整理しやすくなります。
また、音声を聞いて理解できることと、自分で発音できることは同じではありません。
そのため、リスニング練習だけでなく、実際に声を出す練習も取り入れる必要があります。
例えば、一日に5分だけでも、同じ表現を数回録音し、前回の音声と比較してみます。
数日後に同じ表現をもう一度発音し、以前より自然に発音できるようになったか確認する方法も考えられます。
さらに、練習した表現を実際の中国語会話で使用してみることも重要です。
単独の練習では発音できても、会話の途中では声調変化を意識する余裕がなくなる場合があります。
そこで、練習した表現を短い会話へ組み込み、考えながらでも自然に発音できる状態を目指します。
第三声の習得で大切なのは、規則を知ることだけではなく、実際の会話でその規則を意識せずに使えるようになることです。
まとめ
中国語の第三声は、教科書で習う谷型の発音を、すべての場面でそのまま再現するものではありません。
文章の中では、低い部分を中心に発音する半三声がよく使用されます。
また、第三声が二つ続く場合には、通常、前の第三声が第二声に近い音へ変化します。
この二つの特徴を理解することで、中国語の発音をより自然なものへ近づけることができます。
特に重要なのは、一文字ずつ正しく発音できることだけを目標にしないことです。
短い単語から文章へ練習を発展させ、音節同士のつながりや声調の変化を意識しましょう。
録音や手本との比較を活用しながら、自分の発音の癖を少しずつ修正していくことが上達につながります。
中国語の自然な発音は、声調を大げさに再現することではなく、状況に応じた音の変化を理解することから生まれます。